スイスの時計についてのこと 森下信行のブログ

力強い魅力にディティールの美学を感じさせるウォッチメイキング

 

ことにカルティエは、こうした細部へのつくりこみに力を注ぎ込んだ、と語る。たとえばベゼルの内側に彫りこまれた細かなエッジ。これはムーブメントの歯車を想起したデザインだが、このように一見見落としがちな細かいディティールひとつにも、カルティエは妥協のない製作姿勢を貫いた。ハイジュエリーを“クリエイション”として捉え、齟齬のないトータルデザインを試みてきた姿勢がこのウォッチには見てとれるのだ。ことにケースの「造形美」へのこだわりはひとしおで、ラグのサテンとポリッシュの組み合わせによる美しい仕上げはもちろんのこと、人間工学的に計算されたカーブを取り入れて最高のフィット感を達成。加工精度の高い分割構造を採用することで、今後の展開を期待させるようなメンズウォッチへの本格的な意気込みを見せてくれた。ジュエラーとして培われた高いデザイン力をメンズウォッチの世界へとどう融合させるのか、互いの垣根を取り壊したクリエイションの進化をいっそう楽しみにさせてくれる一面だ。